単なるテクニック的な時間術の本ではなく、筆者の哲学の詰まった一冊だと感じた。
本の冒頭からいきなり時間術の話に入るのでなく、前置きにかなりのページを割いている。前置きは、主に期限を守る事の重要性について書かれており、筆者の経歴や、マイクロソフト社でのエピソードを交えて解説される。この前置きが非常に密度が濃く、多くの学びがある。
そしてメインの時間術。書いてあることはシンプルだ。魔法のような方法ではなく、やるか、やらないかだ。実行するには、重い腰を上げる決意が必要だ。
実際の仕事は、想定外の事が発生したりして、時間の見積もり通りにいかないこともよくある。この「時間術」は、その想定外も考えられている。期限は絶対守るものという考え方が根底にある。
下図はこの本を読んで浮かんだ、ダメなやり方と良いやり方のイメージ。どちらがいいかは、想像がつくだろう。
そして、印象に残った言葉。
石膏像を彫るときに、「眉毛」から始める人はいない。
荒削りでもいいから早く全体像を見えるようにして、細かいことは後で直せばいいのです。
引用:本書
この言葉に筆者の時間術の哲学が集約されている。この比喩表現の面白さもあり、この言葉は自分の座右の銘の一つとなっている。
本全体として、内容の深さ、分かりやすさ、実用性、面白さ、全てがハイレベルで、何度も読み返して役立てている。特に、技術系の仕事をする人にお薦めだ。
余談だが、本のタイトルの付け方も面白い。例えば「最強の時間術」とかではなく、「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」という疑問形となっている。本屋で、タイトルを見て、「その答えが書いてあるのか?」と手に取ってしまった。そして実際に書いてあった。