筆者の豊富な経験からくる引き出しの多さは感じるものの、今までの著書に比べやや内容が薄い気がした。著者のスケールの大きさからすると、「人間関係に悩まない」というテーマがこじんまりしすぎているのではないか。
筆者は他の人が真似できないような、大阪の改革を進めてきた。その過程で、何度も心が折れそうになったと思う。その「折れない心」をテーマにした方が良かったのではないか。本書で扱っているのは、人間関係に消耗しないという狭いテーマである。その話題で一冊を持たすのは難しいためか、あまり人間関係には関係ない話も多く出てくる。その為、読んでいて何についての本なのかが若干分からなくなる時もあった。
筆者によると、人間関係を気にせずに生きるためには、「折れない心」を持つことが必要だという。そして、「折れない心」について以下のように書いている。
僕が考える「折れない心」とは、「これが個性だ」と言える「自分の軸」を自身の中に見出す事です。集団の同調圧力から自分を解放し、「個」として生きる勇気をもつこと-すべてはそこから始まります。
引用:本書
これが自分の中で理解に苦しむ箇所であった。「人間関係を気にせず生きるには、自分の軸を持つことが重要」と書けは分かりやすいのに、「折れない心」という言葉を介在させていることで、分かりずらくなっている。
以上、全体的にマイナスの事ばかりを書いたが、筆者の「実行力」という著書と比べてしまうからだろうか?(「実行力」に関しては、紹介される豊富なエピソードが、全て実行力というキーワードに上手く結びついていて、まとまりのある名著だと感じた)